ルールは。
8人制。
6人の登録で試合可能。
前後半8分。
オフサイド無し。
正々堂々。
以上。
今年、年長組になったムスメは晴れて左サイドバックでスタメン入りとなった。
金曜日。
「ご無沙汰してます」
体育の先生からだった。
「今年はいけると思ったんですけど、クジ運が悪く、3戦のうち2戦が強豪と当たるんですよ・・・しかも9人登録したんですけど生憎7人しか参加が出来なくて、年少組の兄弟をいれようかと思ってるんですが」
「完全にネタ構成ですね。仕方がないですので当日楽しみましょうよ」
しかし、9人で登録。
内、7人で試合する事となった。
兄弟構成も出来なかった。
弟を実家に置いてくるという荒技に出た保護者。
「落ち着きが無いから、じっくり試合を見れないから」
確かに。
構成は前から1FW、2MF、3DF。
悪くない。
団子にもならず、ポジション移動できると聞いている。
私も反則技に出る。
前線の指示は先生の声が届くから大丈夫。
だから、キーパーを含めたバックラインの指示をゴール横から吠える。
何故保護者の私が教師でもないのにここまでするかって?
当たり前に、昨年の年長組み時代からサッカーを見ているから。
そして、今年の年長には昨年は居なかったエース級のストライカーが2人もいる。
勝てる可能性が高い。
勝ち星味わってもらいたい。
1試合目。
早くも強豪の内、1チームと対戦。
押されるばかりで、常に相手チームのシュートが止まない。
しかし、キーパーのファインセーブが連発。
拮抗を破ったのは後半。
前線でボールを奪ってそのまま流し込んだ。
エースの内の1人。
さすがエースだ。
そのまま試合終了。
1-0で勝った。
「おっしゃーーーーーー!!!!」
湧き上がる子供達。
「マジで勝ったよ!!!」
盛り上がる保護者達。
キーパーの肩を叩いた。
「お疲れさん。ナイスキープ」
「でしょ」
エースの頭を撫でる。
汗だくだった。
「ナイッシュー」
「見た?!入ったよ」
心から嬉しそうだった。
2試合目。
少し時間があったから、個別に携帯の画面をグラウンドに見立てて作戦を説明していく。
まずはエース2人。
「お前は運動量が多いから、そのまま走り回ってボール取って、シュートを打ちまくれ」
「はーん」
「で、お前は、ゴール前でしょ。だから、自分のチームがやばそう、ボールが真ん中の線より後にある時は、真ん中の○の線まで戻っておいで。ボールが真ん中の線より前にある時は、相手キーパーの前で張ってろ。そこは必ず、ボールが来るから」
「ボール来るの?」
「来るよ。これは経験だ」
エース二人にフットサルの基本作戦を伝えた。
次にムスメを含めたバックライン3人。
「自分達が攻めている時は、真ん中線の少し後まで上がっていいよ」
「出ていいの?」
「大丈夫。今日のセンターバックとキーパーは調子が良いから、いけ!」
「わかった」
試合開始。
また、キーパーの横から指示を出していく。
上がるか下がるか。
ボールを見ろ。
特にキーパーには、集中、ボールから目を離すな。
2試合目はパレードだった。
5-0。
完勝。
見事に伝えた作戦が嵌った。
前線の二人が2点叩き出した。
みんな点数が入るたびに、保護者の所をランニングタッチしていく。
(どこで覚えたんだ)
とか思いながら、遠目で喜んでいた。
「キーパー、やったな!後、1勝すれば優勝もあるかもよ」
「おぉぉぉぉぉぉ!!!」
3試合目。
小雨の後。
子供達の顔には疲労の後が。
ラストの試合が強豪と当たると辛いのは分かる。
ここでもゴール横から声賭けをしていく。
前半半ば、左サイドから押し込まれて、失点。
直後、またもや左サイドから押し込まれ、尚且つキーパーのキャッチミスで失点。
「まだまだ、時間あるから走れーーーー!!!」
子供達に、午前中の元気は見えなかった。
疲れだ・・・
後半、正面から強烈なミドルシュートで失点。
「今のはしょうがない。次々ーーーーー!」
後半ラストプレー。
エースのフリーキックがそのまま決まり1点返すも3-1で負けた。
挨拶。
子供達の顔はやはり疲れきっていた。
「ありがとうございました!」
無理して大声で挨拶をする子供達。
保護者から拍手で労う。
試合を終えたキーパーが手袋を外しながら泣いていた。
「どうした?」
「く や し い・・・」
「そっか、悔しいよな。またがんばろっか」
「・・・」
正直、悔しかった。
力で見たら勝てたゲーム。
所々のミスが痛かった。
特にムスメの左サイドバック・・・
実はムスメ。
サッカーが苦手。
ボールが来ても、人が来ても避ける。
穴の左サイドだった。
そこをつかれた2失点は私も悔しくて涙を浮かべてしまった。
キーパーも自分のミスを理解しているからこその涙。
幼少期、スポーツで悔し涙なんて浮かべた事がない。
だから、羨ましく思えた。
記念撮影。
魂が抜けた子供達の顔に、笑顔は無かった。
この子達はもっと強くなるはず。
それが、この記念撮影の顔に残っている。
悔しさがにじみ出ていた。
来年の2月がラストゲーム。
今度は全勝させてあげたい。
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