2017年7月26日水曜日

419日目:バスロマンス

お風呂。

何もかもが許される禁断の花園。
だと思っている。


あと何年、娘と同じ湯船に浸かれるか…

「成人を超えても一緒に入ってやる!」
とか言う野暮な希望を持つ親。

そう、私。
変態ではなく、一親馬鹿な方の私。


今日も呑気にシャワーを浴びる娘の所へ突入してきた。

「おーーーーぅ!そんなに寂しく入ってないで、熱くパパと体を洗おうぜ!!!!キリッ!」
ウザサ全開で入っていくと、いつも通りの光景だった。
スローペースでボーーーーーーっと洗っている、ではなく手を止めて考え事をしている娘。

「んん~??考えことか~~~???」
どこぞの教師たるや声で質問を投げかけてみた。
間違いなく鬱陶しい存在。それが、私だ!

「あぁ。パパね…」

(なんだ?テンションバリ低っ!)
(毎回同じパターン入室はさすがにうぜーか…)
とか考えていても始まらないので、いつも通りに話しかけてみる。

「なんかあったか~?青春の一幕でも開演したのなら言ってみろ!」
うん。自分でも分かるくらい相当面倒臭いどこぞの先生の真似。

「うん~。私ね、好きな人ができたの」

「ほぅ~。おぉ~。おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
脳内思考を一閃された瞬間。
熱血先生こと、『NARUTO』に登場するガイ先生のモノマネをしている場合ではなくなる。
(これって、リアルに青春の一幕を語ろうとしているじゃないの!)


(落ち着け。私。落ち着け。私。落ち着け。私。落ち着け。私。落ち着け。私。落ち着け。私。落ち着け。私。落ち着け。私。落ち着け。私。落ち着け。私。落ち着け。私。落ち着け。私。落ち着け。私。落ち着け。私。落ち着け。私。落ち着け。私。落ち着け。私。)
高速で自制魔法を詠唱し、ようやく、テンパリから、落ち着きに鎮座した頭を抱え、膝を交えて聞きに徹しようと試みる。

「そう。で、何年生なの?」
(分かってる。分かっちゃ居るけど、質問が甘めのストレート且つ軽すぎるだろーーー!!!)
「2年生の男子」
(やっぱりバックホームに運ばれた~~)

あっさり打ち返された自分を慰める。
(うん。良い事。娘に好きな人ができるのは自然であっていい事。いい事…)

口から泡、またはパクパクしているのをばれないように、続けて質問していく。

「その男の子のどこが好きになったの?」
(見た目。と言ったら、男の子を斬る)
決め打ちで聞いてみた。

「ん~。私ね。トイレの前で泣いてたの。そしたら、その子がね、『泣いていても何も始まらないよ』っていってれたの」

(始まってんじゃねーか!
なにが?
恋が!だよ!
恋だよ!
まじか~。

でも、)

「それ、パパが良く言う言葉じゃない?」
・・・
「うん。大人が言うのは分かるけど、小学校2年生でこの言葉を言う人って凄くない?!」
(『乙女のキラリ』レベル8ですか…沈)

『乙女のキラリ』とは。
『私、本当の恋してます』オーラのこと。

現在、娘はオーラレベルが最大10ある内、レベル8までを解放し、弾ける笑みを浮かべて自慢気に、『こういう小学生いなくね?』的な目線で私を正面から見据えている。

「そう…だな。確かに居たらやべーな」
「でしょーーーー!!!」
同調せざるを得ない状況。
ここは一つ応援しますか。


「その子には好きな人がいるの?」
確認だ。
何の?
言わせるな~。
両想いのだよ~~~。

「うん。私」
「お!」
(キタこれーーー!応援するしかないーーー!!)
「と、私のお友達を好きなんだって」
(おふっ・・・・・・・・・何それ・・・・・・・・良いの・・・・・・・・いや・・・・・・・・「良く」はねーだろ・・・・・・・・ん・・・・・・・・みんな好きってタイプか・・・・・・・)

「いたーーーーっ」
シャンプーの泡が目に入って、涙が。
「パパ、大丈夫?」
「シャンプーの泡が入っただけ。大丈夫だよ。それよりその子はみんなが好きってこと?」
「んーん。私と私のお友達の女の子の、両方が好きなんだって」
「それ、駄目じゃね」
(本音がでてしまったーーーーーー)
「それがね、私のお友達の女子はその子の事が嫌いなの。だーかーらー、私達両想いなの!!!!」
『乙女キラリ』レベル9に増解した娘に、
「そこ、ちがーーーーーう!!障害ありすぎるだろーーーーー!!!それ、男の子からしたら、ふーたーまーたー。分かるー?両想いとまではいかねーよ!」
そもそも『パパ大好き』だっただろレベル9で打ち返した。

止まりっぱなしの娘の手は一向に動く気配が無い。
動くのは口だけだ。
「んー。そしたら、明日話し合ってみる」
「へっ????話し合い????」

頭が着いていけないのは私だけ?

「うん!今日もそのことで話してたんだーーー」
「マジかーーーーーー!!!!!」


最近の子供って進んでるんだなぁ。
覚悟はしていたが、想像を遥かに超えた、ぶっ飛んだ台詞を吐く小学生が居るとは。
しかも、二股解決に話し合いが設けられようとは想像だにしなかった。

『パパ大好き』の地位が歪めらると、否応無しに諦めの境地に立たされる感覚は表現しようもない。


バスロマンスは、娘が恋をしている限りまだ続く。
気がする。

ここはお風呂。
娘との秘密の花園である事に幸いす。

2017年7月19日水曜日

413日目:取り敢えず、べに

むかし、むかし。
かなりの山奥に、おじいさんとおばあさんがいました。

おじいさんは、たんぼへ草刈に。
おばあさんは、トイレへクソ汲みに。

イカ略。


そんな所だから。
そういう所だから。

蚊の量がハンパ無い!

蚊!
か!
KA!

あ~。よく食われたよ。
あ、噛まれたよ。
ん?
刺されたよ。

蚊に刺されたよ!
が正解か。

かゆかった?
かいかった?
痒かった。


毎度、じーちゃんが出してくれるのは…

『白紅』

「はん、べんをそけ!こいっ、ぬっときゃスースーすっでいっきなおっが」

訳。
「お前、白紅を刺された所に!これを塗っておけば、スースーするからすぐ治る」

おぅ。
方言の方がなんとなく楽な気がする。
方言って、すげ…置いといて。

取り敢えず、紅を塗ったさ。
白紅を。
痒い所、噛まれた直前の針の後が残るところ、掻き過ぎて血が出てるところ。
寝苦しい痒さには勝てないから塗り捲ったよ。

スースー。
ずーズー。
あぁ。
あぅ。
あ゛------!

かなり痛い!
白紅を塗ったところが痛い!



妻。
何故か、背中を蚊に刺されていた。
到底手が届かない。

「蚊にさされてるー。かゆみばいばいぬってー」

何がどうなって蚊に刺されたかは別として、ムヒみたいな「かゆみバイバイ」もなくなってたし、ウナクールを塗ってもあまり面白くなさそうだから、『蚊に刺されたら白紅』のじーちゃんの言葉を思い出して白紅を丁寧に塗りこんでみた。

偶然、家に白紅があった。なんでだろ…

これが、大人でも良いリアクションしてくれる。

「あ゛------ーーーーーーー!」
「効くやろ?」
「効く!けど、これ…どこにも『虫刺され』、『痒み止め』って書いて無いじゃん!『捻挫』、「打ち身』、『筋肉痛』とかの痛みしか書いて無いし!」
「あぁ?蚊に刺されたら白紅。って、昔からの話だよ」
「うそーん」

うん。
妻は悶えた。
確かにスースーせんな。
痛いわな…
今年は噛まれんからいいや。


とか思ってたら蚊に噛まれた。
いや。
蚊に刺された。

ん~。
痒い。

ん~。
基礎代謝が上がって私も噛まれるのか。

ん~。
紅塗ろう。


久しぶりの白紅~♪(痛いのは好きではありません)
噛まれた所にダイレクト、シュッダーーーー!

冷やっこい汁が、ジッと痒みを刺激。
痒みから刺激に変化。
次第に刺激から痛みへと痛覚を伝わって、やがて拡張されて激痛へ。

「ぬぅぉっ゛--------!」

この痛みは燃える。
萌える。萌えていた。

「くぅぁぁぁぁーーーーーーーーー!」

自分にも限界の先があったらしく、一汗かいて落ち着いた。

「やっぱ、いってーなぁ」
「でしょ~」
「あ…まじだ」
「言わんこっちゃ無い」

初めてマジマジと白紅の本体、効能の欄を見た。

唖然。

『虫刺され』、『痒み止め』の記載無し。
あるのは、『捻挫』、「打ち身』、『筋肉痛』類の痛み。


お。
おぅ。
じーーーーーーーーちゃーーーーーーん!

白紅は、田んぼで逝かれた腰用だったのね。

2017年7月13日木曜日

407日目:死神

あぁ やっちまった
昨夕 子供らが縄跳びで遊ぶ手前 自慢の私の技をひけらかし
驚嘆に至った子供らの黄色い声だけは確かに聞こえたような


あぁ やっちまった
寝る前のルーティーンでトイレへ行った
記憶のない黒の世界を彷徨い
何食わぬ顔で目が覚めた
其処はさっき座ったばかりのトイレ
どうやら 死神という者は刹那で夢夢の世界に連れて行き 私の4時間を奪っていったようだ


はぁ やっちまった
目覚めの朝
1階に居る妻と娘の声で目が覚めた
いつものように
いつものように
低反発のマットレスは 私の身体を起こしてはくれなかった
体の中心で 何かが握り潰される音が響いた瞬間 声無き声と共に身体はマットレスに沈み込んだ

ゴリっ

はぁ また やっちまった


あぁ やっちまった
昨日の書類の片付けにも行けないまま  ただただ水色の空を眺めながら 近くの園の子供らの熱い声に 心を打ち拉がれる
暑い…暑い…
コルセットを巻いた腰回りに汗をかき エアコンに弱い体質を恨みながら 回復を図りストレッチをしている姿は びしょ濡れになったポメラニアンがキャンキャンと泣き喚いているかのような

あぁ やっちまった
あぁ やっちまった
ギックリ腰とは死神の技でしょうか