「パパ~小さい頃、秘密基地作った事ある?」
「あるよ」
「どんなの?」
「そうだね~」
年長組みから小学校低学年時。
秘密基地作りに没頭した記憶がある。
田舎だったから、場所は家から数百メートル。
小藪の中に板と段ボールを敷き詰めて生えいている竹薮で囲い、落ちていたサッカーボールや野球ボールで飾りつけ、入り口は人の目線が入らないような簡素な秘密基地を作った。
秘密基地。
なんとなく、男の子のロマンだと思う。
作って友達とコソコソっと語らう場所、かくれんぼの隠れ場所。
そういう所だった。
ある時。
そんな秘密基地にエロ本が落ちていて、他人の侵入に気付きそこは利用しなくなった。
「秘密基地のコンセプトは?」
「虫が来なくて、フワフワなところ」
「外にはないねぇ。蜘蛛とかムカデとか平気で出るから。フワフワってことは絨毯とか敷くんでしょ?ちょっとないねぇ」
「えぇー。それでも作りたい」
「だったらまずは家の周辺に秘密基地作りに最適の場所を探すしかないね」
とは言った物の、今の時代そう簡単に他人の領地を侵す行為はご法度。
子供に教授しても咎められるのは親だ。
時代は30年前とは違う。
男のロマンである秘密基地をムスメが作りたいというなら、私のロマンも込めて作りたい。
しかし、場所の選定は高難易度の重要案件。
悩んだ。
相談した妻から助論が出た。
「自分のベッドの下の空間に作れば?」
ベッド下に畳み1畳程、高さ子供の身長より低いぐらいのスペースがあった。
他人に咎められず、虫も出ず(家蜘蛛はでるかも)、モフモフ絨毯も容易だ。
逆転サヨナラ満塁ホームランの案だった。
早速、作業に取り掛かる。
園で使用していた昼寝用の敷布団を敷き、モフモフの毛布をかけて地面を成らす。
そこにカピバラのぬいぐるみ、ハートのクッションを飾り女の子らしさを出して行く。
入り口を大型のキティーちゃん、テディーベアで隠し秘密基地らしくレクチャーしていった。
完成した。
大人1人、子供1人でも入れる秘密基地。
床がフワフワなだけに、ハートのクッションを抱いて転がるとつい寝てしまいそうになる。
ファンシーな空間に男のロマンは一切無しの、乙女の秘密の花園。
数時間、ムスメは1人で満喫していた。
ちょっと羨ましい。
『秘密』にはならないけれど、自分の部屋の中に秘密基地があるなんて。
ガンプラ、ミニ四駆、エアガン類の小物を飾り、パソコン、プロジェクターに5.1chサラウンド、冷蔵庫を完備。
男のロマンを詰めた引きこもり秘密基地にちょっと憧れる。
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